濡れ羽
ぬれば
名詞
標準
文例 · 用例
丁度大雨に遭っていた鶏が夫々雨宿りの下から濡れ羽を振って出て来たように。
— 金史良 『土城廊』 青空文庫
甲板の上は、昨日まで生命と、歌と、愛とで胸を躍らせてゐたこれらの小鳥の死骸が撒き散らされた‥‥シル※ストルと他の檣兵等とは濡れ羽をした、黒い、小さなそれらのきれ/″\を集めて、憫れむ樣子で、彼等の手のなかで、そのきやしやな、青みがゝつた翼をひろげて見た。
— PECHEURS D'ISLANDE 『氷島の漁夫』 青空文庫
烏騅とは、総身、まるで烏の濡れ羽色していたからで、蹄だけが白かった。
— 吉川英治 『新・水滸伝』 青空文庫
珍しや、自身出迎えに表まで出ていったと思われましたが、まもなく伴ってきた者は、今にしてはじめて知らるる十七、八のぬれ羽色に輝く前髪をふっさりとたくわえた一人のお小姓でありました。
— 村正騒動 『右門捕物帖』 青空文庫
ぬれ羽色の髪に、つげの櫛の美しさは見れば見る程味の出る美である。
— 岸田劉生 『新古細句銀座通』 青空文庫
露に濡羽の烏が、月の桂を啣えたような、鼈甲の照栄える、目前の島田の黒髪に、魂を奪われて、あの、その、旅客を忘れた。
— 泉鏡花 『革鞄の怪』 青空文庫
男は帽子を冠らず、髮を濡羽色に、きれいに後ろに撫でつけてゐる。
— 島木健作 『續生活の探求』 青空文庫
夜来の春雨猶止まずして一山風静かに、窓前の柳松翠色更に新たなるを覚え、空廊に響く滴水の音、濡羽をふるふ鶯の声に和して、艶だちたる幽奥の姿誠に心地よく候。
— 石川啄木 『渋民村より』 青空文庫