智嚢
ちのう
名詞
標準
文例 · 用例
そして今いたずらにその貧弱なる智嚢を絞りつくして宇宙と造化の秘義について知らんとし、少ばかりの推測の上に蝶々し喃々する。
— 内村鑑三 『ヨブ記講演』 青空文庫
油井伯爵を首領に戴いた野党の中の智嚢と云われた木内種盛は、微髭の生えた口元まで、三十年|前とすこしも変らない精悍な容貌を持っていた。
— 田中貢太郎 『雨夜草紙』 青空文庫
当時|閥族政府へ肉薄して、政府をして窘窮の極に陥れていた野党の中でも、その中堅とせられている某党の智嚢の死亡は、野党にとっての一大打撃であった。
— 田中貢太郎 『雨夜草紙』 青空文庫
が、伊藤八兵衛の智嚢として円転滑脱な才気を存分に振ったにしろ、根が町人よりは長袖を望んだ風流人|肌で、算盤を持つのが本領でなかったから、維新の変革で油会所を閉じると同時に伊藤と手を分ち、淡島屋をも去って全く新らしい生活に入った。
— ――過渡期の文化が産出した画界のハイブリッド―― 『淡島椿岳』 青空文庫
伊井公侯を補佐して革命的に日本の文明を改造しようとしたは当時の内閣の智嚢といわれた文相森有礼であった。
— ――新文学の曙光―― 『四十年前』 青空文庫
このがらんとした亜鉛屋根の工場とも倉庫とも見える建物内こそ、そこに秘められている大秘密をあばきつくすため、彼の智嚢を傾けつくさねばならぬ大戦場だった。
— 海野十三 『東京要塞』 青空文庫
花村甚五衛門に至っても、同じく歴史の表面へは、その姿を現わさなかったが、その後秀吉の客将となり、竹中半兵衛や黒田如水軒と、絶えず行動を一にし、秀吉の帷幕に参していたそうで、「中津川の智嚢」と綽名されたのは、この人物だったということである。
— 国枝史郎 『蔦葛木曽棧』 青空文庫
宮木氏は、実に本件に於て彼の刑事裁判上の智嚢を傾倒して終ったので、よく本事件を裁断し得たのは、頭脳明晰にして精桿の気溢るゝ如き彼なればこそであろう。
— 甲賀三郎 『支倉事件』 青空文庫