蜊
蜊
名詞
標準
文例 · 用例
春夜浅蜊のやうなもの、蛤のやうなもの、みぢんこのやうなもの、それら生物の身体は砂にうもれ、どこからともなく、絹いとのやうな手が無数に生え、手のほそい毛が浪のまにまにうごいてゐる。
— 萩原朔太郎 『月に吠える』 青空文庫
浅蜊の殻を店の前の泥に敷いていた自身番の老爺は、かかえていた笊をほうり出して、半七らを内へ入れた。
— お化け師匠 『半七捕物帳』 青空文庫
三月 淺蜊やア淺蜊の剥身――高臺の屋敷町に春寒き午後、園生に一人庭下駄を爪立つまで、手を空ざまなる美き女あり。
— 泉鏡太郎 『婦人十一題』 青空文庫
併しおかづは手輕だ、葡萄豆と紫蘇卷と燒海苔と鹿菜と蜊貝のお汁………品は多いが、一ツとして胃の腑の充たすに足りるやうな物はない。
— 三島霜川 『平民の娘』 青空文庫
「卯飲」の一に「卯飲解酲有何物、売来蛤蜊過門渓」の句があつて、「売蛤漢自行徳浦来、毎在日未出時」と註してある。
— 森鴎外 『伊沢蘭軒』 青空文庫
浅蜊ッ貝を小一升と、木葉のような鰈を三枚、それでずぶ濡れになっちゃあ魚屋も商売になりませんや。
— 海坊主 『半七捕物帳』 青空文庫
浅蜊はとなりの家へやって、鰈は老婢とふたりで煮て食ってしまったというのであった。
— 海坊主 『半七捕物帳』 青空文庫
安房上総の山々を背景にして、見果てもない一大遊園地と化した海の上には、大勢の男や女や子供たちが晴れた日光にかがやく砂を踏んで、はまぐりや浅蜊の獲物をあさるのに忙がしかった。
— 海坊主 『半七捕物帳』 青空文庫