航
こう
名詞
標準
文例 · 用例
少し悪口云ふと、歌海の航行に碇も持たず羅針盤も持たないで、行きあたりぱつたりに、航行してゐるやうに見えるのだ。
— 伊藤左千夫 『『悲しき玩具』を読む』 青空文庫
それが石川君の歌を見ると、航行の目的と要求とが明瞭して居つて、それに対する、碇も羅針盤も確実に所有し、自分の行きたい所へ行き、自分の留りたい所へ留つてるのである。
— 伊藤左千夫 『『悲しき玩具』を読む』 青空文庫
二ヶ月ばかり前のことであるが、欧洲航路の事務長をしている従兄からドイツのチーズを貰ったので敏子はそのわけを手紙に書いて村上にチーズを贈った。
— 九鬼周造 『かれいの贈物』 青空文庫
わたしは鶉のやうに羽ばたきながらさうして丈の高い野茨の上を飛びまはつたああ 雲よ 船よ どこに彼女は航海の碇をすてたかふしぎな情熱になやみながらわたしは沈默の墓地をたづねあるいたそれはこの草叢の風に吹かれてゐるしづかに 錆びついた 戀愛鳥の木乃伊であつた。
— 萩原朔太郎 『青猫』 青空文庫
おぼろにみえる沖の方から船人はふしぎな航海の歌をうたつて 拍子も高く楫の音がきこえてくる。
— 萩原朔太郎 『青猫』 青空文庫
おぼろにみえる沖の方から船びとはふしぎな航海の歌をうたつて 拍子も高く楫の音がきこえてくるあやしくもここの磯邊にむらがつてむらむらとうづ高くもりあがり また影のやうに這ひまはるそれは雲のやうなひとつの心像 さびしい寄生蟹の幽靈ですよ。
— 萩原朔太郎 『蝶を夢む』 青空文庫
ああ 雲よ 船よ どこに彼女は航海の碇をすてたかふしぎな情熱になやみながらわたしは沈默の墓地をたづねあるいた。
— 萩原朔太郎 『定本青猫』 青空文庫
もはやそこには、何の鬱陶しい天氣もなく、來るべき航海日和の、いかに晴晴として麗らかに知覺せらるることぞ。
— 萩原朔太郎 『宿命』 青空文庫