漾
漾
名詞
標準
文例 · 用例
薄闇が、ただ漾々と身辺に動いてゐる。
— 太宰治 『お伽草紙』 青空文庫
薄闇が、ただ漾々と身邊に動いてゐる。
— 太宰治 『お伽草紙』 青空文庫
天の一方には弦月が雲間から寒い光を投げて直下の海面に一抹の真珠光を漾わしていた。
— 寺田寅彦 『札幌まで』 青空文庫
そして、ジャズの音が激しく、光芒のなかで、歔欷くように、或は、猥雑な顫律を漾わせて、色欲のテープを、女郎ぐものように吐き出した。
— 吉行エイスケ 『東京ロマンティック恋愛記』 青空文庫
―― と精々|喜多八の気分を漾わせて、突出し店の硝子戸の中に飾った、五つばかり装ってある朱の盆へ、突如立って手を掛けると、娘が、まあ、と言った。
— 泉鏡花 『雛がたり』 青空文庫
――あら、看板ですわ―― いや、正のものの膝栗毛で、聊か気分なるものを漾わせ過ぎた形がある。
— 泉鏡花 『雛がたり』 青空文庫
…… ぶるぶる震うと、夫人はふいと衾を出て、胸を圧えて、熟と見据えた目に、閨の内をとしたようで、まだ覚めやらぬ夢に、菫咲く春の野をうごとく、裳も畳に漾ったが、ややあって、はじめてその怪い扱帯の我を纏えるに心着いたか、あ、と忍び音に、魘された、目の美しい蝶の顔は、俯向けに菫の中へ落ちた。
— 泉鏡花 『婦系図』 青空文庫
」 と突飛ばすと、閑耕の匐った身体が、縁側で、はあはあ夢中になって体操のような手つきでいた英吉に倒れかかって、脚が搦んで漾う処へ、チャブ台の鉢を取って、ばらり天窓から豆を浴びせた。
— 泉鏡花 『婦系図』 青空文庫