矮林
わいりん
名詞
標準
文例 · 用例
六十一 汽車が武蔵の平野へ降りてくるにつれて、しっとりした空気や、広々と夷かな田畠や矮林が、水から離れていた魚族の水に返されたような安易を感じさせたが、東京が近くにつれて、汽車の駐まる駅々に、お島は自分の生命を縮められるような苦しさを感じた。
— 徳田秋声 『あらくれ』 青空文庫
谿を隔てゝのテーブル、ランドの上には、黒姫の麓の高原には、黒い岩の散つて落ちてゐるのが、矮林が、藪だたみが、まだ消えやらない山頂の霧の影を寫して、白く光る處、薄暗く隈どる處、人間の住まない寂しい原野の姿を見せてゐる。
— 吉江喬松 『霧の旅』 青空文庫
矮林、藪だたみ、雜草などに覆はれてゐる山の北に面した谿陰は、まだ雪が殘つてゐるが、南に向つた山の脊脈、崖をなした斷面は、暖かさうに日を受けてゐる。
— 吉江喬松 『山岳美觀』 青空文庫
山の頂には、薄雪がかゝり、それから下、森に到るまで、矮林も藪だたみも、紅く染つて、夕日が照らしつけると、沈んだ紅色をぼかし出す。
— 吉江喬松 『山岳美觀』 青空文庫
彼は、風景よりも人通りを気にして小径を出はずれると頭につかえる松の矮林の中へ腰をかゞめて姿を没した。
— 牧野信一 『雪景色』 青空文庫
森々と更け渡った深夜ではあり、巨木|矮林茂り重なった、木曽の山路であるだけに、恐ろしさも一層であった。
— 国枝史郎 『蔦葛木曽棧』 青空文庫
例の白い岩は、矮林の上に十分見えてはいたが、まだ八分の一マイルばかり出洲を下ったあたりにあって、矮木の間を時々は四つん這いになって這いながらそれに近づくまでには、かなりの時間がかかった。
— 宝島 『宝島』 青空文庫
わたしはそこの樫の矮林のなかに煉瓦がのこっているのを見た。
— WALDEN, OR LIFE IN THE WOODS 『森の生活――ウォールデン――』 青空文庫