恍
こう
名詞
標準
文例 · 用例
夢を支配する自由 阿片やモルヒネの麻醉が、人を樂しく恍惚とさせるのは、それが半醒半夢の状態を喚起させ、夢を自由に幻想することができるからである。
— 萩原朔太郎 『夢』 青空文庫
敍事詩は、内容から言ふと明白に今日の散文であつて、歴史上の傳説や、小説的な戀物語やを、單に平面的に敍述した者にすぎないのであるが、その拍節の整然たる調律によつて、讀者をいつしか韻律の恍惚たる醉心地に導いてしまふ。
— 萩原朔太郎 『青猫』 青空文庫
僕にはむつかしいことはわからないが、とにかく、僕等が音楽をきく目的は、美しい旋律や和声からして、快よい陶酔と恍惚とを求めるのだ。
— 萩原朔太郎 『ラヂオ漫談』 青空文庫
妻や近所の細君たちが、愚にもつかない日常の世間話をしてゐるのが、何よりも興趣深く、且つ恍惚とした詩情にさへ思はれた。
— 萩原朔太郎 『病床生活からの一発見』 青空文庫
それらの平凡無味なタダゴトが、いつも私を心ちよい夢の恍惚にさそふまで、特殊な俳味的の芸術心境を感じさせた。
— 萩原朔太郎 『病床生活からの一発見』 青空文庫
何故ならば、芸術の存在理由は芸術自身の裡にあること、恰も塩ッからいものが塩ッからく、砂糖が、甘いが如きものであり、恍惚は恍惚であれ、恍惚は直接|他に伝達出来るものではなく、恍惚の内部がよく感取され、即ち他の恍惚内部との相関関係に於て僅かに暗示・表現することが出来るに過ぎないから。
— 中原中也 『芸術論覚え書』 青空文庫
宗教に入つて、尠くも朝と夕方に、帰依する気持があれば、謙譲は持続しやすく、さうであれば、詩的恍惚もミツチリと感じられ、漸次に味の深いものが、生れるやうになる筈だと思つた。
— 中原中也 『詩壇への抱負』 青空文庫
この山の美しさは、恍焉として私を蠱惑する。
— 小島烏水 『不尽の高根』 青空文庫