見過ごし
みすごし
名詞
標準
文例 · 用例
小倉はここでもまた彼が事柄をあまり簡単に見過ごしていたこと、今では彼|一人だけが、当の責任者に転化したことを痛感した。
— 葉山嘉樹 『海に生くる人々』 青空文庫
この間じゅうからいろいろの禍いがつづいている矢先であるので、お藤はなんとなく気にかかって、そのまま見過ごしてゆくことが出来なくなった。
— 津の国屋 『半七捕物帳』 青空文庫
女たちは少年の心のうつろを見過ごしてただ形の美しさだけを寵した。
— 岡本かの子 『雛妓』 青空文庫
取り上げられた方は、そこで始めて気が付き是非もないという顔で見過ごします。
— 岡本かの子 『生々流転』 青空文庫
平生はただ美しいとばかりで不注意に見過ごしている秋の森の複雑な色の諧調は全く臆病な素人絵かきを途方にくれさせる。
— 寺田寅彦 『写生紀行』 青空文庫
連載記事とつごう四件飛び込んできた開発依頼をこなすのに精いっぱいで、同級生が懸命に取り組んでいる就職活動をひと事のように見過ごしていた松本は、日立からの誘いを受けてあらためて自分が卒業間近であることを確認した。
— 富田倫生 『パソコン創世記』 青空文庫
智子が考えてみるのに、その青年は前から其処の自動車会社に勤めていて、これ迄も幾度かお互に顔を合わせながら、どんな男の社員たちにも殆ど関心をもたなかった彼女だったので、つい見過ごしていたのかも知れなかった。
— 渡辺温 『或る母の話』 青空文庫
この不安感、焦燥感は、不用意に見るときは、感じないで見過ごしてしまふ程度のものである。
— 美術論・画論 『小熊秀雄全集−19−』 青空文庫