愉
愉
名詞
標準
文例 · 用例
糟谷は種畜場におって、公務をとるよりは、村落へでて農民を相手に働くのが、いつも愉快に思われてきた。
— 伊藤左千夫 『老獣医』 青空文庫
座して衣食に究せず、其の日其の日を愉快に経過するを以て、能事とせる家庭ならば、或は今日の家庭説を以て多くの支障を見ぬのであろう。
— 伊藤左千夫 『家庭小言』 青空文庫
学資に不自由なく身体の健全な学生程、世の中に羨しいものはなかった、本郷の第一高等学校の脇を通ると多くの生徒が盛に打毬をやって居る、其の愉快げな風がつくづく羨しくて暫く立って眺めた時の心持、何とも形容の詞がない。
— 伊藤左千夫 『家庭小言』 青空文庫
予は一切の私心的希望を捨てて、老母の生先十数年の奉養を尽さんが為に、凡人となり愚人となるに甘ぜんと心を定めた時に不思議と歓喜愉快の念が内心に湧いたのである。
— 伊藤左千夫 『家庭小言』 青空文庫
他人の為に自己の或る点を犠牲にして一種の愉快を得るは人間の天性であるらしいが、予が老いたる父母の生先の為に自己の欲望を捨てたのであるから、何となく愉快の念が強い。
— 伊藤左千夫 『家庭小言』 青空文庫
令名を当世に挙げ富貴の生活を為すは人世の最も愉快なるものに相違ないが、予の如き凡人的愉快も又云うべからざる趣味がある。
— 伊藤左千夫 『家庭小言』 青空文庫
神は必しも富貴なる人にのみ愉快を与えぬのである、予一人の愉快のみでない、老いたる父母が予の決心を知って又深く愉快を感じたは疑を要せぬ。
— 伊藤左千夫 『家庭小言』 青空文庫
僕も勿論愉快が溢れる……、宇宙間にただ二人きり居るような心持にお互になったのである。
— 伊藤左千夫 『野菊の墓』 青空文庫