甜郷
甜郷
名詞
標準
文例 · 用例
これは夜の意識が仮初に到達した安心の境ではあるが、この境が幸に黒甜郷の近所になっていたと見えて、べろべろの神さんの相変らず跳梁しているにも拘らず、純一は頭を夜着の中に埋めて、寐入ってしまった。
— 森鴎外 『青年』 青空文庫
かつてここまで登って来て、どこをどう見廻わしても、耳をどう振っても蝉気がないので、出直すのも面倒だからしばらく休息しようと、叉の上に陣取って第二の機会を待ち合せていたら、いつの間にか眠くなって、つい黒甜郷裡に遊んだ。
— 夏目漱石 『吾輩は猫である』 青空文庫
おやと思って眼が醒めたら、二叉の黒甜郷裡から庭の敷石の上へどたりと落ちていた。
— 夏目漱石 『吾輩は猫である』 青空文庫
嗚呼、誰か天火を革命の聖壇に燃やして、長夜の闇を破るものぞ、誰か革命の角笛を吹いて、黒甜郷裡の逸眠を破るものぞ。
— 芥川龍之介 『木曾義仲論(東京府立第三中学校学友会誌)』 青空文庫