肌守り
はだまもり
名詞
標準
文例 · 用例
肌守りを懸けて、夜中に土堤を通ろうじゃあないか。
— 泉鏡花 『外科室』 青空文庫
中洲の大将の話では、子供心にも忘れないのは、その頃盛りだった房さんが、神田祭の晩|肌守りに「野路の村雨」のゆかたで喉をきかせた時だったと云うが、この頃はめっきり老いこんで、すきな歌沢もめったに謡わなくなったし、一頃凝った鶯もいつの間にか飼わなくなった。
— 芥川龍之介 『老年』 青空文庫
あのひとがわたしに十字架をくれて、わたしがあのひとに肌守りのお像を上げたんですの。
— フョードル・ミハイロヴィッチ・ドストエフスキー 『罪と罰』 青空文庫
僕はこれと同じような十字架を二つ知ってる、銀のと肌守りの聖像と。
— フョードル・ミハイロヴィッチ・ドストエフスキー 『罪と罰』 青空文庫
相手が有難さうにして居るから、罰でも當つちや惡からうと、叔母さんが拵へてくれた肌守りの中に封じ込んで來ましたよ、この通り」 八五郎は懷ろをくつろげて、掛け守りを取出しましたが、思はず、「あツ、こいつはいけねえ」 あわてゝ立ち上がると、帶を解いたり裾を叩いたり、すつかり度を失つて居るのです。
— 苫三七の娘 『錢形平次捕物控』 青空文庫
「こいつは孕んで居ますね、親分」「何んといふ口のきゝやうだ、可哀想に」「おや、女の癖に、肌守りをして」「どれ/\」 平次は血に汚れた袷をはだけると、乳と乳の間に下つて居る、肌守の紐をプツと切りました。
— 旅に病む女 『錢形平次捕物控』 青空文庫
どうぞ御存分になすって下さい」「何と言う」「八、覚悟はいいな」「ヘエ、この通りで――」 バラリと肌を脱ぐと、いつの間に用意したか、一尺五寸ばかりの大熨斗を、肌守りの紐に括って背中に斜めに背負っている悪戯っ気の八五郎です。
— 駕籠の行方 『銭形平次捕物控』 青空文庫
死骸の懐中には、腹巻に突っ込んで、匕首が一と口、肌守りと煙草入と、その煙草入の中に、小粒が三つ四つ、外には持ち物もなく、素より誰がこんな恐ろしいことをやったのか、手掛りらしいものは一つもありません。
— 恋患い 『銭形平次捕物控』 青空文庫