紛らわし
まぎらわし
名詞
標準
文例 · 用例
紛らわしようもない若宮のお顔つきであったが、帝には思いも寄らぬことでおありになって、すぐれた子どうしは似たものであるらしいと思召した。
— 紅葉賀 『源氏物語』 青空文庫
梅花の香も御簾の中の薫物の香と紛らわしく漂っていて、現世の極楽がここであるような気がした。
— 初音 『源氏物語』 青空文庫
「私の愛しているあなたにとって、あちらのことは迷惑千万に違いないが、それをあなたは許して、つまらない者の感情をまで思いやってくれる寛大な愛に比べて、私のはただお上が悪くお思いにならないかという点だけで苦労をしているのは、あさはかな愛の持ち主というべきですね」 微笑をしてお言い紛らわしになる。
— 若菜(下) 『源氏物語』 青空文庫
しかし素姓の紛らわしいことは男の身にあってもよいが、どんな高貴な方の母になるかもしれぬ女性は生まれが確かでなければならぬ点から言えば、これがかえってよいかもしれぬとまたお思い返しになった。
— 柏木 『源氏物語』 青空文庫
うき世にはゆき消えなんと思ひつつ思ひのほかになほぞ程経る こうした時を何かによって紛らわしておいでになる院は、すぐに召し寄せて手水をお使いになった。
— まぼろし 『源氏物語』 青空文庫
見し人のかたしろならば身に添へて恋しき瀬々のなでものにせん これを例の冗談にして言い紛らわしてしまった。
— 東屋 『源氏物語』 青空文庫
ただいつもこんなふうでお暮らしになっていらっしゃるばかり」 聞いていて美しいお身の上であると思うことで知らず知らず歎息の声の洩れて出たのを、怪しむ人があるかもしれぬと思う紛らわしに、女房たちが前へ出した和琴を、調子もそのままでかき鳴らす薫であった。
— 蜻蛉 『源氏物語』 青空文庫
智子は、苦笑などでは紛らわしきれない程、ひどく当の外れたような物足りなさを覚えた。
— 渡辺温 『或る母の話』 青空文庫