嶮
嶮
名詞
標準
文例 · 用例
小渋川よりも、川幅が狭くて、谷地が、かえって濶いだけに、徒渉の回数は少い、深山の渓流としては、先ず安楽な方で、小渋川や、槍ヶ岳の蒲田谷などとは、深さと、急と、嶮しさとにおいて、到底、比べられない。
— 小島烏水 『白峰山脈縦断記』 青空文庫
これはしかし吉田口の五合目から、富士に向って、左に路を取り、宝永山の火口壁から、その火口底へ下り、大宮方面の大森林に入って、大沢の嶮を越え、小御岳へ出るのが順で、始めて「大願成就」になるのだが、私は故あって、逆に山に向って右廻りをした。
— 小島烏水 『不尽の高根』 青空文庫
その天空に浮遊するかの如き、嶮にして美なる林道を「天の浮橋」と呼ぶそうであるが、何よりも喬木林の陰森さにおどろかされる。
— 小島烏水 『不尽の高根』 青空文庫
火口壁は四十度以上の急角度で、胸突八丁よりも峻嶮に、火口底までは直径約一千尺の深さで、頂上内院大火口よりも深いものである。
— 小島烏水 『不尽の高根』 青空文庫
だから、捲上の線は余分な土や岩石を掘り取らないように、四十五度以上にも峻嶮に、川上と川下とから穴の中に辷り込んでいた。
— 葉山嘉樹 『坑夫の子』 青空文庫
飯場から学校までの、一里半の峻嶮な上り一方の坂道は、同時に、峻嶮なる児童の社会生活である。
— ――生きる為に―― 『山谿に生くる人々』 青空文庫
しかし、その山が、途方もなく急嶮であるにも拘わらず、とにかく、四十年の間は、安全であった。
— ――生きる為に―― 『山谿に生くる人々』 青空文庫
天竜川中流の、峻嶮極まる峡谷地帯で一日中日照時間が三時間だとか四時間だとか云ふ地帯にも、こんないい日があるかと思はれるやうな、人の心も清々しくなるやうな一日であつた。
— 葉山嘉樹 『万福追想』 青空文庫