振り照らす
ふりてらす
動詞
標準
文例 · 用例
寒い風はまだ吹きやまないで、旅館の出迎えの男どもが振り照らす提灯の灯のかげに、乗合馬車の馬のたてがみの顫えて乱れているのが見えた。
— 岡本綺堂 『綺堂むかし語り』 青空文庫
それを合図のように二人はつかつかと進み寄って、袖の下に隠していた火縄を振り照らすと、その小さい火に対して相手は余りに大き過ぎるらしく、ただ真っ黒な物が眼のさきに突っ立っているだけで、その正体はよく判らなかった。
— 岡本綺堂 『馬妖記』 青空文庫
もとの場所へ辿りつくと、「さて最後にお見せしたい物が、実はここにもう一つござる」こういいながら平八は、巨大な桜樹の根もとから、川とは反対に耕地の方へ、土手の腹を下って行ったが、提灯で地面を振り照らすと、「ご覧なされ足跡が、土手下の耕地を両国の方へ、走っているではござらぬかな。
— 国枝史郎 『名人地獄』 青空文庫
「やつて見ませう、八も來い」「よし來た」 二人は飛びました、山王樣の森の下へ行くと、一パイの人だかり、振り照らす提灯や、燈籠の灯に覺束なくも照らされて、一番高い石垣の上に、何やら人が蠢めくのです。
— 旅に病む女 『錢形平次捕物控』 青空文庫
広場の先の小さい穴の中へ行って見ると、懐中電灯を振り照らす迄もなく、二人の人間が死んだもののようになって倒れております。
— 野村胡堂 『水中の宮殿』 青空文庫
誰もいないじゃありませんか」 博士の振り照らす懐中電燈の光が、二つの部屋をグルッと一巡したのに、その光の中へは何者の姿も現われなかった。
— 江戸川乱歩 『悪魔の紋章』 青空文庫