屋並み
やなみ
名詞
標準
文例 · 用例
夜そこに入って、樹立の間から前面の屋並みを見ると、電燈の明るい二階座敷や、障子の陰に見える客や芸者の影、箱をかついで通る箱丁、小刻みに歩いて行く女たちの姿などが、芝居の舞台や書割のようでもあれば、花道のようでもあった。
— 徳田秋声 『縮図』 青空文庫
空には暗く雨雲が垂れ下って、屋並みの低い町筋には、湯帰りの職人の姿などが見られた。
— 徳田秋声 『黴』 青空文庫
洒落た花形の電気の笠などの下った二階の縁側へ出て見ると、すぐ目の前に三聯隊の赭い煉瓦の兵営の建物などが見えて、飾り竹や門松のすっかり立てられた目の下の屋並みには、もう春が来ているようであった。
— 徳田秋声 『爛』 青空文庫
そのうえに見物は町々屋並みを埋めるばかり、将軍家還御になってしまうと、道に張られていた引きなわはいっせいにもう取りのけられて、見物かってのお許しになっているため、雪にもめげずに押し寄せた有象無象が、押すな押すなの大混雑です。
— 献上博多人形 『右門捕物帖』 青空文庫
年の瀬近い江戸の大路の屋並みは、すでにまったく大戸をおろして、まこと名物の江戸の花が、いまにもそこらあたりからじゃんじゃんぼうとやりだしそうな夜ふけでした。
— 身代わり花嫁 『右門捕物帖』 青空文庫
そのあと、座間とカークが疲れたような目で、ぼんやりと屋並みをながめている。
— 有尾人 『人外魔境』 青空文庫
ひろい川面は、その西から北にあたるところに、街の屋並みと粗林の木々と、――噛みつくような崖の岸を持ち、日没はいち早く片側を黒くしていた。
— 本庄陸男 『石狩川』 青空文庫
いくらか爪先あがりの道はやっぱり白く乾き、古びた屋並みのなかにもぐっている。
— 本庄陸男 『石狩川』 青空文庫