温室育ち
おんしつそだち
名詞名詞-の形容詞
標準
sheltered upbringing
文例 · 用例
温室育ちの蘭が緋毛氈の上で匂っている。
— 岡本かの子 『餅』 青空文庫
中流的で当時としては自由な家庭の雰囲気の中にあった彼女の生活は、経済の面でも思想の面でも謂わば温室育ちであった。
— 宮本百合子 『婦人と文学』 青空文庫
失礼ながら温室育ちの奥さんに比べりゃ、数等世情に通じているからこそ、見るに見かねて、いえ、やむにやまれぬオセッカイ。
— ――ゴロー三船とマゴコロの手記―― 『ジロリの女』 青空文庫
兄弟子に升田のやうなガラッ八がゐて、頭ごなしにどやされつゞけて育つたのだから、平静な心を修得するのも自然で、温室育ちといふ生易しいものがないのである。
— 坂口安吾 『勝負師』 青空文庫
これに比べると、東京方の原田八段は、棋理明※であるが、温室育ちの感多分で、勝負師の性根の坐りといふものが、なんとなく弱々しく見受けられた。
— 坂口安吾 『勝負師』 青空文庫
大黄河にもみまくられて育ったシナの歴史や文化にくらべれば、飛鳥川に有為転変の感懐を託していた日本文化の源流というものは、温室育ちも極端であり、あまりにも小さすぎて、いじらしく、悲しく、おかしく、異様ですらある。
— 坂口安吾 『我が人生観』 青空文庫
那智の滝に、山の嵐に鍛えた彼の声には、繊細を尊しとした温室育ちの殿上人の声などはひとたまりもなかった。
— 第五巻 『現代語訳 平家物語』 青空文庫