雌蝶
めちょう
名詞
標準
文例 · 用例
金屏風を引繞らした、四海波静に青畳の八畳で、お珊自分に、雌蝶雄蝶の長柄を取って、橘活けた床の間の正面に、美少年の多一と、さて、名はお美津と云う、逢阪の辻、餅屋の娘を、二人並べて据えたのである。
— 泉鏡花 『南地心中』 青空文庫
「雌蝶も雄蝶もあったもんじゃないのよ貴方。
— 夏目漱石 『道草』 青空文庫
或時は、我手して露の玉に湿ふ花の頭をうち破る夢を見、又た或時は、春に後れて孤飛する雌蝶の羽がひを我が杖の先にて打ち落す事もあり、かつて暴らかりしものを、彼女に会ひてより和らげられし我が心も、度々の夢に虎伏す野に迷ひ、獅子|吼ゆる洞に投げられしより、再び暴れに暴れて我ながらあさましき心となれり。
— 北村透谷 『我牢獄』 青空文庫
「雄蝶、雌蝶だなんて、娘達に教えるばかりでも大変ですよ」「いや、そうして頂けば難有い」と稲垣も言った。
— 島崎藤村 『家(上巻)』 青空文庫
よしんば永久に帰らないにしても、後に残っている雌蝶をさえ、握っていれば大丈夫だよ。
— 国枝史郎 『神秘昆虫館』 青空文庫
なくなった雄蝶ばかりに心を取られ、雌蝶の方を疎かにしては、かえってよくないとこういうのさ。
— 国枝史郎 『神秘昆虫館』 青空文庫
これはどうでも放さなければならない」こう云いながら昆虫館館主が、一匹残っていた雌蝶の方を、空高く放してやった事。
— 国枝史郎 『神秘昆虫館』 青空文庫
「だがいったいこの蝶は、雄蝶の方だろうか雌蝶の方だろうか?
— 国枝史郎 『神秘昆虫館』 青空文庫