染殿
そめどの
名詞
標準
文例 · 用例
――やあ、緑青色の夥間に恥じよ、染殿の御后を垣間見た、天狗が通力を失って、羽の折れた鵄となって都大路にふたふたと羽搏ったごとく……慌しい遁げ方して、通用門から、どたりと廻る。
— 泉鏡花 『白金之絵図』 青空文庫
――夏の比、染殿の辰巳の山の木隱れに、君達、二三人ばかり涼んだ中に、春家も交つたが、此の人の居たりける傍よりしも、三尺許りなる烏蛇の這出たりければ、春家はまだ氣がつかなかつた。
— 泉鏡太郎 『春着』 青空文庫
すはだしで、その染殿の東の門より走り出で、北ざまに走つて、一條より西へ、西の洞院、それから南へ、洞院下に走つた。
— 泉鏡太郎 『春着』 青空文庫
また『淡海録』曰く、昔|赤染衛門、若衆に化けてこの鐘を見に来り、鐘を撫ぜた手が取り著いて離れず、強く引き離すと手の形に鐘取れた痕なり、また染殿后ともいうと。
— 田原藤太竜宮入りの話 『十二支考』 青空文庫
『今昔物語』二十の七に、染殿后を犯した婬鬼赤褌を著けて腰に槌を差したと記す。
— 鶏に関する伝説 『十二支考』 青空文庫
本邦にも善相公と同臥した侍童の頭を疫鬼に槌で打たれ病み出し、染殿后を犯した鬼が赤褌に槌をさしいたといい、支那の区純ちゅう人は槌で鼠を打ったという(一八六九年板、トザーの『土耳其高地探究記』二巻三三〇頁。
— 鼠に関する民俗と信念 『十二支考』 青空文庫
よくものの草紙などに、震旦から天狗が渡ったと書いてありますのは、丁度あの染殿の御后に鬼が憑いたなどと申します通り、この沙門の事を譬えて云ったのでございます。
— 芥川龍之介 『邪宗門』 青空文庫
お染殿はなる可く此処から戻るのだ」「でも龍之助様」 お染は鉄砲を掻い抱く恰好で、クネクネと身体を振ります。
— 野村胡堂 『大江戸黄金狂』 青空文庫