斜向こう
はすむこう
名詞
標準
文例 · 用例
そして、其處から斜向うに見えるその窓を見上げた。
— 南部修太郎 『病院の窓』 青空文庫
汀の、斜向うへ――巨な赤い蛇が顕われた。
— 泉鏡花 『神鷺之巻』 青空文庫
と、隅田の川波、渺々たるに、網の大きく水脚を引いたような、斜向うの岸に、月村のそれらしい、青簾のかかった、中二階――隣に桟橋を張出した料理店か待合の庭の植込が深いから、西日を除けて日蔭の早い、その窓下の石垣を蔽うて、もう夕顔がほの白い…… ……時であった。
— 泉鏡花 『薄紅梅』 青空文庫
この市隠荘はお絹等姉妹の父で漢学者の荒木蛍雪が、中橋の表通りに画帖や拓本を売る蛍雪館の店を開いていた時分に、店の家が狭いところから、斜向うのこの露路内に売家が出たのを幸、買取って手入れをし寝泊りしたものである。
— 岡本かの子 『食魔』 青空文庫
斜向うのイギリス銀行、ロイド・ナショナル・プロヴィンシアル・バンクの支店から出て来た髭の生えたプラスフォアのイギリス人が日当りの好さそうな卓を選んで席を取った。
— ――朝と昼―― 『巴里のキャフェ』 青空文庫
」 その時斜向うの五条坂の方から、一台の車の上つて来るのが見えた。
— 加能作次郎 『乳の匂ひ』 青空文庫
下駄やの斜向うに菊そばがあります。
— 一九四四年(昭和十九年) 『獄中への手紙』 青空文庫
看護婦は上草履のまま、石炭殻の上を、ひょいひょいと飛び越えて斜向うの別棟の入口へ姿を消す。
— 宮本百合子 『伸子』 青空文庫