忍ぶ草
しのぶぐさ
名詞
標準
文例 · 用例
呼び出した院の預かり役の出て来るまで留めてある車から、忍ぶ草の生い茂った門の廂が見上げられた。
— 夕顔 『源氏物語』 青空文庫
昔のままに飾りつけのそろっていることは、忍ぶ草のおい茂った外見よりも風流に見えるのであった。
— 蓬生 『源氏物語』 青空文庫
軒も狭い山荘作りの家であったから、忍ぶ草の葉の露も次第に多く光っていく。
— 総角 『源氏物語』 青空文庫
日影も忍ぶ草がくれ、蜻蛉はひとりみ空より 解けにし藍の一すぢの糸かとばかりかゝりたる、 『時』の翅もさながらに二人の上に休らひぬ。
— 島崎藤村 『新生』 青空文庫
振り返ってみると、忍ぶ草を摺った薄色の狩衣に、太刀を横たえ、頭巾をかぶり、さらに頭巾の上から大笠をかぶっている旅人であった。
— 吉川英治 『平の将門』 青空文庫
そして全くその通り稲光りがまた新らしく落ちて来たときその気の毒ないちばん丈の高い花が、あまりの白い興奮に、とうとう自分を傷つけて、きらきら顫うしのぶぐさの上に、だまって横わるのを見たのです。
— 宮沢賢治 『ガドルフの百合』 青空文庫
「しのぶぐさ日記」には、梅雨降りつゞく頃はいと侘し、うしがもとにはいと子君|伯母君|二処居たり、君は次の間の書室めきたるところに打ふし居たまへり。
— 長谷川時雨 『樋口一葉』 青空文庫
只、こうして手をつかねて風鈴をしのぶ草にくくりつけている。
— 林芙美子 『新版 放浪記』 青空文庫