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揺椅

揺椅
名詞
1
標準
文例 · 用例
ただ一人、部屋に籠って明々と燃えているファイヤープレイスの前に揺椅子をひき据えていました。
渡辺温 象牙の牌 青空文庫
気の迷いかしら、それとも揺椅子でぬくもりながらついウトウトとしてしまって夢をみたのかしら――酒と阿片とでいい加減狂いかけている俺の頭だもの、その位の気の迷いや夢がないとも云えない――が、併しそんな風に簡単に思いなしてしまうには、どうもすべてがあんまりまざまざとし過ぎている。
渡辺温 象牙の牌 青空文庫
その人達はよく彼の家に集まって、彼の談話に耳を傾ける宵を更したのですが、いかに多くの人が押しかけても、彼の坐るべき場所は必ず暖炉の傍で、彼の腰をおろすのは必ず一箇の揺椅ときまっていました。
夏目漱石 行人 青空文庫
朱の揺椅子岡をのぼる人よ、野をたどる人よ、さてはまた、とびらをとぼとぼとたたく人よ春のひかりがゆれてくるではないか。
大手拓次 藍色の蟇 青空文庫
わたしたちふたりは朱と金との揺椅子のうへに身をのせて、このベエルのやうな氛気とともに、かろくかろくゆれてみよう、あの温室にさくふうりん草のくびのやうに。
大手拓次 藍色の蟇 青空文庫
椅子に眠る憂欝はればれとその深い影をもつた横顔を花鉢のやうにしづかにとどめ、揺椅子のなかにうづくまる移り気をそそのかして、死のすがたをおぼろにする。
大手拓次 藍色の蟇 青空文庫
みどりいろの、ゆふべの揺椅子のなやましさに、みじかい生の花粉のさかづきをのみほすのか。
大手拓次 藍色の蟇 青空文庫
揺椅子で日向ぼっこをしていた彼は、「有難う、有難う」と云いながら、彼女の片手を執って敲いた。
宮本百合子 或る日 青空文庫