村路
むらじ
名詞
標準
文例 · 用例
「はやい方が可い、聞くのに――」けれども山吹と藤のほか、村路の午静に、渠等を差覗く鳥の影もなかった。
— 泉鏡花 『半島一奇抄』 青空文庫
また一年の前なり、その村の祝勝提灯行列の夜、幾百の村民が手に手に紅燈を打ふりて、さながら大火竜の練り行くが如く、静けき村路に開闢以来の大声をあげて歓呼しつゝ家国の光栄を祝したる事あり。
— 石川啄木 『閑天地』 青空文庫
その時、黒装束に覆面した怪物が澤村路之助丈えと染めぬいた幕の裏からあらはれいでヽ赤い毛布をたれて、姫君の死骸をば金泥の襖のうらへと掃いていつてしまつた。
— 見知らぬ世界 『桜さく島』 青空文庫
たまたま用事を急いで、村路を隣村へ出て行くものがあつても、黒い一つの團りを、田の畔に見付けたらば、恐らく柳の枯木の圓くなつてゐるのだらうと思ひなして、知らずに通り過ぎて行つたかも知れない。
— 吉江喬松 『山岳美觀』 青空文庫
村路に至るまでも、路幅は廣し、東郊の低地は、路明るけれど、西郊の臺地は、樹林を帶びて、路何となく陰氣也。
— 大町桂月 『東京の近郊』 青空文庫
村路に兒童ならびて禮をなすことは、平生旅行して、たび/″\出逢ひたることなるが、これは、ちと、へん也。
— 大町桂月 『狹山紀行』 青空文庫
その外の村路に沿うて又うねうね柵あり、あっちこっちにいろんな木の形のものが立って居て、これが国境かと可笑し。
— 一九二九年(昭和四年) 『日記』 青空文庫
村路は狭く、スウィスとは思われぬくらいうすきたない松薪の、山のように積んであった上に並んで、もとより日暮れ近い残り惜しさと云った調子で、がやがや岳烏のようにはしゃいでいた餓鬼共が、人の顔を見ると神妙に、帽子をぬいで御辞儀をした。
— 辻村伊助 『スウィス日記』 青空文庫