溶け去る
とけさる
動詞
標準
文例 · 用例
その中に身を置いておれば、何の不安も苦悩もなく、静かに宇宙のなかに溶け去ることもできそうだ。
— 原民喜 『美しき死の岸に』 青空文庫
それは硝酸と塩酸とを混ぜた混合酸であるが、この酸に黄金を漬けると始めて黄金は形が崩れ、やがて、全く形を失って液の中に溶け去る。
— 海野十三 『疑問の金塊』 青空文庫
――晴れても曇っても、冬が日一日と溶け去るけはいは争われなかった。
— 宮本百合子 『伸子』 青空文庫
而も希臘彫刻の傑作に見るが如き貴き素朴と沈静なる偉大とを兼ね備えた山の前には、私の神経細胞の中に生じつつあった少量の醗酵素は、自己を危くするまでに毒素を分泌するに至らずして、旭に消ゆる霜の如くに溶け去るのを覚えた。
— 木暮理太郎 『黒部川奥の山旅』 青空文庫
野づらの残雪が知らぬまに溶け去ると、堤の日だまりや田の畔にちらちらと青みがさしはじめ、杭瀬川はとくとくと水嵩を増した、そしてある日、狂ったように東南の暖かい風が吹き荒れたあと、まるでその風がはこんで来たもののように春がおとずれた。
— 春三たび 『日本婦道記』 青空文庫
澄んだ心の神々しい輝きの前では、すべての闇は消え去り、あらゆる雲が溶け去る。
— MORNING AND EVENING THOUGHTS 『朝に想い、夜に省みる』 青空文庫