老桜
ろうおう
名詞
標準
文例 · 用例
接木をしたとかいう老桜よ、若返ってくれ。
— 九鬼周造 『祇園の枝垂桜』 青空文庫
二ひら三ひら、微風に乗って舞うともなく白いものが落ちてくるので、振り仰ぐと、いままで気がつかなかったが、屋敷の横から饗庭家との境へかけて、これはまたみごとな老桜の林、八重には早いから今が彼岸の花盛りだ。
— 林不忘 『つづれ烏羽玉』 青空文庫
「秘密の一端明かせてやろう、部屋へおいで、来るがよい」 縁を上って行く後から、従いて行ったのは娘の民弥で、二人家の内へ隠れた時、老桜の陰からスルスルと忍び出た一人の人物があった。
— 国枝史郎 『南蛮秘話森右近丸』 青空文庫
途端に老桜の樹陰から、「待て!
— 国枝史郎 『善悪両面鼠小僧』 青空文庫
一昨年の春わたくしは森春濤の墓を掃いに日暮里の経王寺に赴いた時、その門内に一樹の老桜の、幹は半から摧かれていながら猶全く枯死せず、細い若枝の尖に花をつけているのを見た。
— 永井荷風 『上野』 青空文庫
また今年の春には谷中瑞輪寺に杉本樗園の墓を尋ねた時、門内の桜は既に散っていたが、門外に並んだ数株の老桜は恰も花の盛であったのみならず、わたくしは其幹の太さより推測して是或は江戸時代の遺物ではあるまいかと、暫く佇立んでその梢を瞻望した。
— 永井荷風 『上野』 青空文庫
空襲の頻々たるころ、この老桜が纔に災を免れて、年々香雲|靉靆として戦争中人を慰めていたことを思えば、また無量の感に打れざるを得ない。
— 永井荷風 『葛飾土産』 青空文庫
市兵衛町表通宮内省御用邸塀外に老桜数株あり。
— 断腸亭日記巻之五大正十年歳次辛酉 『断腸亭日乗』 青空文庫