本卦
ほんけ
名詞
標準
文例 · 用例
済んまへんが一つ……」縫うてくれと頼むと、そのままぎこちない世間話をしながらいつまでも坐り込み、お君を口説く機会は今だ今だと心に叫んでいたが、そんな彼の肚を知ってか知らずにか、お君は、長願寺の和尚さんももう六十一の本卦ですなというつまらぬ話にも、くるりくるりと眼玉をまわして、げらげら笑っていた。
— 織田作之助 『青春の逆説』 青空文庫
それでも先代の息のかよっている間は、若い次郎左衛門はさすがに幾らか遠慮しているらしい様子も見えたが、その父が六十一の本卦がえりを済まさないで死んだのちは、もう誰に憚るところもない。
— 岡本綺堂 『籠釣瓶』 青空文庫
三 六十一の本卦祝ひをした太政官には、五十五になる妻があつたけれど、兒は一人もなかつた。
— 上司小劍 『太政官』 青空文庫
世間では、本卦返りのこの齢まで通してきた師匠の独りぐらしをあれこれと取り沙汰しているようであるが、師匠は或る信条からこの独りの身を戌り通しているともきいていた。
— 矢田津世子 『※女抄録』 青空文庫
隠居は房さんと云って、一昨年、本卦返りをした老人である。
— 芥川龍之介 『老年』 青空文庫
本卦がえりにモウ二ツ三ツという年ごろ。
— 三宅花圃 『藪の鶯』 青空文庫
まだ御当人は死ぬなどとは思わず、本卦還りの歳になったら南の演舞場を借りて花々しい会を催すのだと云っていたことなど。
— 中巻 『細雪』 青空文庫
「おら去年の夏に本卦返りをしただからよ、四十年てえばおめえ、……その、どこでなにょうしてただね、ずいぶん世間をひろく見て来ただろうし、金もしっかり拵れえたろうしよ、おめえ、……まだくる眼が起こるだかえ」 杢助は横になっていた。
— 山本周五郎 『似而非物語』 青空文庫