茅花
つばな
名詞
標準
文例 · 用例
たんぽぽの花を取ったり、茅花を抜いたり、又桑を摘みに山へつれられて行ってはシドミの花を分けて根についてある実を探したり、夢の様に面白かったことは、何十年という月日を過ぎても記憶に存している。
— 伊藤左千夫 『井戸』 青空文庫
……時間を思っても、まだ小学校前らしいのが、手に、すかんぼも茅花も持たないけれど、摘み草の夢の中を歩行くように、うっとりとした顔をしたのと、径の角で行逢った。
— 泉鏡花 『若菜のうち』 青空文庫
春は若草、薺、茅花、つくつくしのお精進……蕪を噛る。
— 泉鏡花 『茸の舞姫』 青空文庫
休みながらお話しましょう」 智子はやや呆けた茅花の穂を二三本手でなびけて、その上に大形の白ハンカチを敷いた。
— 岡本かの子 『明暗』 青空文庫
…… 董、茅花の時分から、苗代、青田、豆の花、蜻蛉、蛍、何でも田圃が好で、殊に二百十日前後は、稲穂の波に、案山子の船頭。
— 泉鏡花 『沼夫人』 青空文庫
けれども、さして心を傷めた趣のあるにもあらず、茅花々々|土筆、摘草に草臥れて、日南に憩っているものと、大なる違はない。
— 泉鏡花 『わか紫』 青空文庫
まさかオンバコやスギ菜を取って食わせる訳にもゆかず、せめてスカンポか茅花でも無いかと思っても見当らず、茗荷ぐらいは有りそうなものと思ってもそれも無し、山椒でも有ったら木の芽だけでもよいがと、苦みながら四方を見廻しても何も無かった。
— 幸田露伴 『野道』 青空文庫
本邦で茅を「ち」と訓じ「ち」の花の義で茅花を「つばな」と訓む、「ち」とは血の意で昔誰かが茅針で足を傷め血がその葉を染めて赤くしたと幼時和歌山で俚伝を聞いたが確と記えぬ。
— 虎に関する史話と伝説民俗 『十二支考』 青空文庫