胴忘れ
どうわすれ
名詞
標準
文例 · 用例
」「いや、」一葉女史の墓だときいて、庭の垣根の常夏の花、朝涼だから萎むまいと、朝顔を添えた女の志を取り受けて、築地本願寺の墓地へ詣でて、夏の草葉の茂りにも、樒のうらがれを見た覚えがある…… ……とばかりで、今、今まで胴忘れをしていた、お京さん……が、何しに来たろう。
— 泉鏡花 『薄紅梅』 青空文庫
いや、然う云ふ間もない、彼處に立つてる、貴女とお話をするうちは、實際、胴忘れに手紙のことを忘れて居ました。
— 泉鏡太郎 『艶書』 青空文庫
と、俎に向った処――鮒と鯛のつくりものに庖丁を構えたばかりで、鱗を、ふき、魚頭を、がりり、というだけを、吶る、あせる、狼狽える、胴忘れをしてとぼん、としている。
— 泉鏡花 『雪柳』 青空文庫
そのほか凝り性、厭き性、ムラ気、お日和機嫌、胴忘れ、神経質、何々道楽、何々キチガイ、何々中毒、変態心理なぞの数をつくして、出会う人|毎に、知るも知らぬも、多少のキチガイ的傾向を帯びていない者は無い。
— 夢野久作 『ドグラ・マグラ』 青空文庫
そのほか、凝り性、厭き性、ムラ気、お日和機嫌、胴忘れ、神経質、何々道楽、何々キチガイ、何々中毒、男あさり、女たらし、変態心理なぞの数を尽して百人が百人、千人が千人とも多少の精神異状的傾向を持たない者はない。
— 夢野久作 『ドグラ・マグラ』 青空文庫
……オカシイナ……ツイ胴忘れしちゃってチョット思い出せないんですが。
— 夢野久作 『キチガイ地獄』 青空文庫
しかしわれわれはその女房が現在この荷馬車のてつぺんに乗つかつてゐることをつい胴忘れしてゐた。
— VECHERA NA HUTORE BLIZ DIKANIKI 『ディカーニカ近郷夜話 前篇』 青空文庫
「そうだ、桐島さんだ、何時も胴忘れをしましてね、で、絹漉は、ちりか何かになされるので」「どうですか、やっこに切ると云ってましたよ」「そうですか、やっこに、では、すぐお届けいたします」 女房が立って来て顔をだした。
— 田中貢太郎 『黄燈』 青空文庫