実着
じっちゃく
名詞
標準
文例 · 用例
積極的にと云うと言い過ぎるかも知れぬけれども、暗に人から瞞されて、働かないでもすんだところを、無理に馬鹿気た働きをした事になっているから、奥さんの実着な勤勉は、精神的にも、物質的にも何らの報酬をモーパッサン氏もしくは読者から得る事ができないようになってしまいます。
— 夏目漱石 『文芸の哲学的基礎』 青空文庫
右のほか、驕傲と勇敢と、粗野と率直と、固陋と実着と、浮薄と穎敏と相対するがごとく、いずれもみな働きの場所と、強弱の度と、向かうところの方角とによりて、あるいは不徳ともなるべく、あるいは徳ともなるべきのみ。
— 福沢諭吉 『学問のすすめ』 青空文庫
余は日本青年会のどこまでも実着に真面目にあることを願ふばかりである。
— 正岡子規 『病牀六尺』 青空文庫
カメラのつかいかたを、実着にリアリスティックに一定していて、雰囲気の描写でもカメラの飛躍で捕えようとせず、描くべきものをつくってカメラをそれに向わせている態度である。
— 宮本百合子 『「愛怨峡」における映画的表現の問題』 青空文庫
常識に基いた穏健な実着な思想といわんよりは寧ろローマンチックな奇抜な事を言い出したので田夫野人も趣味を以てこれに耳を傾け、従ってその説の弘まり方も非常に早く、その代りに誤解もまた多くあった。
— 新渡戸稲造 『デモクラシーの要素』 青空文庫
しかるに新聞雑誌に大いに紹介さるところの人々は、みな一代の富豪で、いわゆる俄大尽のみであるから、さなきだに空想に駆られ易い青年などは、一足飛びに大金持になれるものと心得、実着細心を要する業務に従事することを軽んずる傾きを生ぜしめる。
— 相馬愛蔵 『私の小売商道』 青空文庫
ロシアのやって居ることはごく実着でない。
— 河口慧海 『チベット旅行記』 青空文庫
イギリスの方は誠に実着に出て居りますけれども、外交上の事はどうも実着ばかりで勝を制するとも、また権謀術数が勝を制するとも、一言にいうことは出来ない。
— 河口慧海 『チベット旅行記』 青空文庫