距離感
きょりかん
名詞
標準
sense of distance (physical or emotional)
文例 · 用例
それから、聖者はまた、二つ三つ、眼をしばだたくと、聖者の眼に富士はいつも寺の縁から眺められる距離感に戻って、青空に匂った。
— 岡本かの子 『宝永噴火』 青空文庫
距離感と時間的観念とはいつの間に消滅していて落下か上騰か不明の運動に慧鶴の精神も肉体も支配され、息も詰まるばかりの緊張で宇宙のどこかに放たれ飛んで行った。
— 岡本かの子 『宝永噴火』 青空文庫
宵色の中に当って平沙の渚に、夜になるほど再び捲き起るらしい白浪が、遠近の距離感を外れて、ざーっざーっと鳴る音と共に、復一の醒めてまた睡りに入る意識の手前になり先になりして、明暗の界のも一つの仲間の世界に復一を置く。
— 岡本かの子 『金魚撩乱』 青空文庫
私は日本の東北の或る寒駅に汽車を待佗びている旅人のような気がして故国との距離感を暫く忘れたほど東洋的な閑寂な気分に引入れられた。
— 岡本かの子 『褐色の求道』 青空文庫
欧米の高いもの広いものを見慣れて来て、その上、二十日間も涯なき海を渡って来た加奈子の視力はまたここで距離感を失った。
— 岡本かの子 『豆腐買い』 青空文庫
一方でMS―DOSのビジネスを大成功させながら、一九八〇年代を通してマイクロソフトは先行するマックへの憧れと距離感とに心を引き裂かれ、思春期の純情な少年の胸を焦がしていった。
— 富田倫生 『青空のリスタート』 青空文庫
○川崎栄一氏――大作であつたが、肝心の距離感が喪失してゐた、テーマの上では難はなく、意志と恐怖と哀愁とは現代の三つのテーマとも言へるものであるが、川崎氏の群像はその時代的な象徴を語るものであつた。
— 美術論・画論 『小熊秀雄全集−19−』 青空文庫
△浜田観――『初夏の花』距離感が不足してゐた、絵の具の盛り上げの効果は、ある域に達してゐたが、写実に喰ひ下り方が足りない。
— 美術論・画論 『小熊秀雄全集−19−』 青空文庫