驀直
ばくちょく
名詞
標準
文例 · 用例
驀直に傍目も振らずという意味であります。
— 岡本かの子 『仏教人生読本』 青空文庫
此時、車中に殘して置いた猛犬稻妻が急に吼立てるので、頭を廻らすと、今しも爐裂彈で逃出したる獅子の一群が、今度は非常な勢で、彼方の森から驀直に襲撃して來たのである。
— 押川春浪 『海島冐檢奇譚 海底軍艦』 青空文庫
東雲の、遙か/\の海上より、水煙を揚げ、怒濤を蹴つて、驀直に駛け來る一艘の長艇あり、やゝ近づいて見ると、其艇尾には、曉風に飜る帝國軍艦旗!
— 押川春浪 『海島冐檢奇譚 海底軍艦』 青空文庫
橋の上を流るるごとく驀直に、蔵屋へ駆込むと斉しく、床几の上へ響を打たせて、どたりと倒れたのは多磨太である。
— 泉鏡花 『黒百合』 青空文庫
「もう湯は抜けるのかな」「へい、松の内は早仕舞でございます」 車夫のかく答へし後は語絶えて、車は驀直に走れり、紳士は二重外套の袖を犇と掻合せて、獺の衿皮の内に耳より深く面を埋めたり。
— 尾崎紅葉 『金色夜叉』 青空文庫
そんな酷い事をなさらなくても、其処の角まで参ればお放し申しますから、もう少しの間どうぞ……」「好い加減になさい」 と暴かに引払ひて、寄らんとする隙もあらせず摩脱くるより足を疾めて津守坂を驀直に下りたり。
— 尾崎紅葉 『金色夜叉』 青空文庫
その死を止めんの一念より他あらぬ貫一なれば、かくと見るより心も空に、足は地を踏む遑もあらず、唯遅れじと思ふばかりよ、壑間の嵐の誘ふに委せて、驀直に身を堕せり。
— 尾崎紅葉 『金色夜叉』 青空文庫
傍目もふらずに、驀直に進むより外仕方がない』 そしてこの箇々並存の世界は、無論善悪を超脱してゐる。
— 田山録弥 『スケツチ』 青空文庫