御歌
おうた
名詞
標準
文例 · 用例
十八日、丙戌、霽、子剋、将軍家南面に出御、時に灯消え、人定まりて、悄然として音無し、只月色蛬思心を傷むる計なり、御歌数首、御独吟有り、丑剋に及びて、夢の如くして青女一人前庭を奔り通る、頻りに問はしめ給ふと雖も、遂に名乗らず、而して漸く門外に至るの程、俄かに光物有り、頗る松明の光の如し。
— 太宰治 『右大臣実朝』 青空文庫
将軍家のお歌も、このとしあたりが最も真剣に御労作なされた御時期でございまして、その翌年あたりからは、御歌道にもおこたり、時たま御酒宴の御座興にたはむれのお歌をおよみになるくらゐのもので、まじめに御思案なされてお作りになる事は年に二度か三度、ほとんど数へるくらゐに少くなつてしまひました。
— 太宰治 『右大臣実朝』 青空文庫
信實の歌にては、夕立する頃の例のいかめしき雲を云へるが如く、後鳥羽院の御歌にては、たゞ美しき夕の雲をさし玉へるが如し。
— 幸田露伴 『雲のいろ/\』 青空文庫
「わだつみのとよはた雲に入日さしこよひの月夜あきらけくこそ」といへる天智天皇の御歌に見えたるがはじめなるに、御歌にては、旗の形なせるやうの夕の雲を云ひたまへるのみなり。
— 幸田露伴 『雲のいろ/\』 青空文庫
八雲立つの神の御歌を解きて、その時立ちし雲は天地のみたまの顕はせりし吉瑞にて、いともくしびなる雲なりけむなど橘の守部が云へるは、当れりや否や、知らず。
— 幸田露伴 『雲のいろ/\』 青空文庫
宮城野の露吹き結ぶ風の音に小萩が上を思ひこそやれ という御歌もあったが、未亡人はわき出す涙が妨げて明らかには拝見することができなかった。
— 桐壺 『源氏物語』 青空文庫
挿し櫛のはいった小箱につけられた飾りの造花に御歌が書かれてあった。
— 絵合 『源氏物語』 青空文庫
別れ路に添へし小櫛をかごとにてはるけき中と神やいさめし この御歌に源氏は心の痛くなるのを覚えた。
— 絵合 『源氏物語』 青空文庫