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狂愛

きょうあい
名詞
1
標準
文例 · 用例
抑も恋愛の始めは自らの意匠を愛する者にして、対手なる女性は仮物なれば、好しや其愛情益発達するとも遂には狂愛より静愛に移るの時期ある可し、此静愛なる者は厭世詩家に取りて一の重荷なるが如くになりて、合歓の情或は中折するに至は、豈惜む可きあまりならずや。
北村透谷 厭世詩家と女性 青空文庫
ひそかに部屋の戸を開きて外に出れば悽惻として情人未だ去らず、泣いて遠国に連よとくどく時に、清十郎は親方の情にしがらまれて得|応へず、然るを女の狂愛の甚しきに惹かされて、遂に其誘惑に従はんと決心するまでに至りし頃、中より人の騒ぎ出たるに驚かされて止ぬ。
北村透谷 「歌念仏」を読みて 青空文庫
清十郎の追払れたりし時には未だ分別の閭には迷はざりしものを、このお夏の狂愛に魅せられし後の彼は、早や気は転乱し、仕損ふたら浮世は闇、跡先見えぬ出来心にて、勘十郎と思ひ誤りて他の朋輩なる源十郎を刺殺したるも、恋故の闇に迷へばこそ。
北村透谷 「歌念仏」を読みて 青空文庫
抑も恋愛の始めは自らの意匠を愛するものにして、対手なる女性は仮物なれば、好しやその愛情ますます発達するとも、遂には狂愛より静愛に移るの時期あるべし。
島崎藤村 桜の実の熟する時 青空文庫
剣怪丹下左膳の主君、乾坤二刀の巴渦を巻き起こしたそもそもの因たる蒐剣狂愛の相馬|大膳亮が、この深夜に、寝床の中からつづみの与吉に対面を許して、左膳の秘使を聞きとり、それに応じてさっそく対策を講じようとしているところ……。
乾雲坤竜の巻 丹下左膳 青空文庫
しかも藩主大膳亮が刀剣を狂愛するくらいだから、よしや雪月花を解する風流にはとぼしいといえども気風として烈々|尚武の町であった。
乾雲坤竜の巻 丹下左膳 青空文庫
不愍がられる値打はあったであろうヒルミ夫人の立場であったけれど、その狂愛の対象たる万吉郎にとって、それは必ずしも極楽に座している想いではありかねた。
海野十三 ヒルミ夫人の冷蔵鞄 青空文庫
ただ一人の万吉郎を狂愛しているのであって、そうは簡単に男を変えるような夫人ではない。
海野十三 ヒルミ夫人の冷蔵鞄 青空文庫