淋
淋
名詞
標準
文例 · 用例
それから『独都より』の「リンデン」の作は、作者も云うてる如く、前の歌の淋しい内にも嬉しい親しみのある情調とは異なり、旅情の淋しさと自然のさびれた淋しみとを独りしみじみと味わってる情調が、一句一句の端にも湛うてる。
— 伊藤左千夫 『歌の潤い』 青空文庫
例の如く題目も思想も取立てていう程の事ではなくていて、しかも無限の味いを持ってるのは、一首の声調に作者の淋しい内的情態が、さながらに表現されて居るからである。
— 伊藤左千夫 『歌の潤い』 青空文庫
結句の『枯葉落つる日』この一句これを取離して見れば、ただそれだけのことで、何等作者の独創があるのでなく、唯一句の記号に過ぎない詞であるが、この歌の結句にこの一句を置いて見ると、この平凡な一句が一首全体の上に、非常に淋しい影響と共鳴とを起すのである。
— 伊藤左千夫 『歌の潤い』 青空文庫
葉の落ちて只黒き幹のぬくぬくとあまた立ちならぶ様のさびしも 初句『葉の落ちて』の極めて自然な詞つきに、はや淋しい声を感ぜられる。
— 伊藤左千夫 『歌の潤い』 青空文庫
第四句第五句なども「あまた立ちたり見るにさびしも」と明晰に云って終えば口調は強くなるけれども、淋しい沈んだ気持は現われない。
— 伊藤左千夫 『歌の潤い』 青空文庫
僕も民子がのぞかない日は何となく淋しく物足らず思われた。
— 伊藤左千夫 『野菊の墓』 青空文庫
僕もただ話の小口にそう云うたまでであるから、民子に泣きそうになられては、かわいそうに気の毒になって、「僕は腹を立って言ったでは無いのに、民さんは腹を立ったの……僕はただ民さんが俄に変って、逢っても口もきかず、遊びにも来ないから、いやに淋しく悲しくなっちまったのさ。
— 伊藤左千夫 『野菊の墓』 青空文庫
この二日の間に民子と三四回は逢ったけれど、話も出来ず微笑を交換する元気もなく、うら淋しい心持を互に目に訴うるのみであった。
— 伊藤左千夫 『野菊の墓』 青空文庫