雲脂
ふけ
名詞
標準
文例 · 用例
」 と身動きに眉を顰めて――長屋の窓からお饒舌りの媽々の顔が出ているのも、路地口の野良猫が、のっそり居るのも、書生が無念そうにその羽織の紐をくるくると廻すのも――一向気にもかけず、平気で着せて、襟を圧えて、爪立って、「厭な、どうして、こんなに雲脂が生きて?
— 泉鏡花 『婦系図』 青空文庫
)って俯向くんです、……枕にこぼれて束ね切れないの、私はね、櫛を抜いて密と解かしたのよ……雲脂なんかちっとも無いの、するする綺麗ですわ、そして煩ってから余計に殖えたようよ……髪ばかり長くなって、段々命が縮むんだわねえ。
— 泉鏡花 『吉原新話』 青空文庫
引続いての多忙と、引続いての寝不足とが、彼の顔色を蒼ざめさせ、生際のあたりにいくらかの雲脂さへ見える。
— 平出修 『瘢痕』 青空文庫
十 二週間ほどして、ある朝銀子は病床のうえに起きあがり、タオルを肩にかけて、痒みの出て来た頭の髪をほどき、梳櫛を入れて雲脂を取ってもらっているところヘ、写真師の浦上が入って来た。
— 徳田秋声 『縮図』 青空文庫
」 銀子は梳いた髪をいぼじり捲きにしてもらい、少しはせいせいして、何か胸がむず痒いような感じで膝のうえで雑誌をめくったりしていたが、小谷さんは新聞にたまった雲脂と落ち毛を寄せて、外へ棄てに行った。
— 徳田秋声 『縮図』 青空文庫
十 二週間ほどして、ある朝銀子は病床のうえに起きあがり、タオルを肩にかけて、痒みの出て来た頭の髪をほどき、梳櫛を入れて雲脂を取ってもらっているところへ、写真師の浦上が入って来た。
— 徳田秋声 『縮図』 青空文庫
叔母は待ち憊れて安火に入って好きな講釈本を読んでいたし、お庄は帰ろう帰ろうと思いながら、もう外へ出るのが億劫になって、暖かい日のあたる縁側で、雲脂の多い母親の髪を釈いて梳いてやっていた。
— 徳田秋声 『足迹』 青空文庫
そうして其所に溜っている雲脂をごしごし落し始めた。
— 夏目漱石 『道草』 青空文庫