高鼾
たかいびき
名詞
標準
文例 · 用例
昔彼の文覺と云ふ荒法師は、佐渡へ流される船路で、暴風雨に會つたが、船頭水夫共が目の色を變へて騷ぐにも頓着なく、大の字なりに寢そべつて、雷の如き高鼾ぢや。
— 泉鏡花 『旅僧』 青空文庫
船は走る、口は辷る、凪はよし、大話しをし草臥れ、嘉吉めは胴の間の横木を枕に、踏反返って、ぐうぐう高鼾になったげにござります。
— 泉鏡花 『草迷宮』 青空文庫
」 十「いや、黒服の狂犬は、まだ妾の膝枕で、ふんぞり返って高鼾。
— 泉鏡花 『南地心中』 青空文庫
大尉は、すでにぐうぐう高鼾です。
— 太宰治 『貨幣』 青空文庫
なんて出鱈目に怒鳴るんですって、――コリャコリャと囃してね、やがて高鼾、勿論|唯一人。
— 泉鏡花 『式部小路』 青空文庫
午後、樹明君来庵、ぼうばくとしてゐる、かういふ情態にある彼を救ふものは、恐らくは、疾病しかないであらう、悲しい人間現実の一相である、すすめて休ませた、高鼾で寝たのはよかつた。
— 種田山頭火 『其中日記』 青空文庫
三人の泥棒はグウグウ高鼾で寝込んでゐるトムの枕元に立つて不意に枕を足で蹴飛ばしましたので、トムさんは吃驚して眼を覚しました、トムさんは自分の眼の前に背のヒョロ高い顔の真黒い鬚だらけの泥棒がによつきり突き立つてゐるので、トムさんは驚くまいことか、一時は腰を抜かさんばかりに吃驚しました。
— 童話集 『小熊秀雄全集-14』 青空文庫
つまり、内角が外角に変ってしまうのですが、いまあの生物は引ん曲った溝を月の山のようにくねらせて、それは長閑な、憎たらしい高鼾をかいておりますの。
— 小栗虫太郎 『白蟻』 青空文庫