黙拝
もくはい
名詞
標準
文例 · 用例
南海霊山の岩殿寺、奥の御堂の裏山に、一処咲満ちて、春たけなわな白光に、奇しき薫の漲った紫の菫の中に、白い山兎の飛ぶのを視つつ、病中の人を念じたのを、この時まざまざと、目前の雲に視て、輝く霊巌の台に対し、さしうつむくまで、心衷に、恭礼黙拝したのである。
— 泉鏡花 『縷紅新草』 青空文庫
上座に坐ると勿体らしく神社の方を向いて柏手を打って黙拝をしてから、居合わせてる者らには半分も解らないような事をしたり顔にいい聞かした。
— 有島武郎 『カインの末裔』 青空文庫
けれど黙拝した良人はそれで満足したらしい容子なので、密かに心を安んじた。
— 第三分冊 『新書太閤記』 青空文庫
会議の報告、新君擁立の誓いなど、胸中の万感を交えて、長々と信長の霊に告げているものか、黙拝|拈香、いと重々しく、さらに合掌久しゅうしていた。
— 第八分冊 『新書太閤記』 青空文庫
――だがその前に、ちょっと、御挨拶しておこうか』 次の間の薄暗い机の上に、線香の火が見えたので、木村丈八は、その前へ行って黙拝した。
— 吉川英治 『新編忠臣蔵』 青空文庫
徐庶は、面を沈めたまま、黙拝また黙拝して、ようやく眉をあげた。
— 孔明の巻 『三国志』 青空文庫
殺気満ち盈つ中を、歩々、水の如くすすんで、周瑜の祭壇に到るや、その前にぬかずいて、やや久しく黙拝していたが、やがて携えてきた酒、その他の種々を供え、霊前に向ってうやうやしく自筆の弔文を読んだ。
— 望蜀の巻 『三国志』 青空文庫
やがてその高氏も、雨のような虫の音の中で、土饅頭へ黙拝していた。
— みなかみ帖 『私本太平記』 青空文庫