片糸
かたいと
名詞
標準
文例 · 用例
「逢はずば何を」(片糸をこなたかなたに縒りかけて合はずば何を玉の緒にせん)と薫は歎かれるのであるが、自身のことを正面から言うことはできずに、洩らす溜息に代える程度により口へ出しえないのは、姫君のあまりに高貴な気に打たれてしまうことが多いからであった。
— 総角 『源氏物語』 青空文庫
ちょうど疳持の小児が、むつかしくぐずり掛かるところへ、迷宮様に道筋を引き廻した図や、縺れ解けぬ片糸を手渡せば、一心不乱にその方をほどきに懸る内、最初思い立ちいた小理窟は、忘れてしまうがごとしと。
— 蛇に関する民俗と伝説 『十二支考』 青空文庫
莖を折つては、纎維を引き出し、其片糸を幾筋も合せては、絲に縒る。
— 釋迢空 『死者の書』 青空文庫
茎を折つては、繊維を引き出し、其片糸を幾筋も合せては、絲に縒る。
— ――初稿版―― 『死者の書』 青空文庫
茎を折つては、繊維を引き出し、其片糸を幾筋も合せては、糸に縒る。
— 折口信夫 『死者の書』 青空文庫
茎を折っては、繊維を引き出し、其片糸を幾筋も合せては、糸に縒る。
— 折口信夫 『死者の書』 青空文庫
貫之の糸によるものならなくにわかれ路の心ぼそくもおもほゆるかなを解いては、別れ路のこゝろといふものは、糸による片糸のやうなものぢやないけれど、心細いものであるわい、といふやうなやりくちである。
— 折口信夫 『古歌新釈』 青空文庫
「……後には、園が、うき思い、かかれとてしも烏羽玉の、世の味気なさ、身一つに、結ばれ、とけぬ片糸の、くりかえしたる独りごと……」 染奴は、蛭子神社の境内で、お京からいわれたことを思いだしていた。
— 火野葦平 『花と龍』 青空文庫