群立
ぐんりつ
名詞
標準
文例 · 用例
その麓まで見通しの、小橋の彼方は、一面の蘆で、出揃って早や乱れかかった穂が、霧のように群立って、藁屋を包み森を蔽うて、何物にも目を遮らせず、山々の茅薄と一連に靡いて、風はないが、さやさやと何処かで秋の暮を囁き合う。
— 泉鏡花 『海の使者』 青空文庫
珠か、黄金か、世にも貴い宝什が潜んで、気の群立つよ、と憧憬れながら、風に木の葉の音信もなければ、もみぢを分入る道も知らず……恰も燦爛として五彩に煌めく、天上の星を指しても、手に取られぬ、と異りはない。
— 泉鏡太郎 『神鑿』 青空文庫
日本橋の橋の上で裸の大の字になりなさい」と言ったところでわたしが傍にさえいたらわたしの方を子供のようにちろ/\頼りに見ながら群立つ人々を人臭いとも思わず、赤子の寝起きのようにやおら裸の大の字になり得る女だった。
— 岡本かの子 『生々流転』 青空文庫
物寂しく獨り聳えたる塔の尖に水鳥の群立ち來らんを候ひて網を張りたるあり。
— IMPROVISATOREN 『即興詩人』 青空文庫
新鮮な藍と白茶との群立だ。
— 北原白秋 『フレップ・トリップ』 青空文庫
生長し、生殖し、受胎し、産卵し、展望し、喧騒し、群立し、思考し、歓喜し、驚異し、飛揚し、飜躍し、――島そのものから、ああ、島そのものからすばらしい創世紀にあるのだ。
— 北原白秋 『フレップ・トリップ』 青空文庫
そして、湿っぽい林道の両側には熊笹の藪が高くなり、熊笹の間からは闊葉樹が群立して原生樹林帯はしだいに奥暗くなっていった。
— 佐左木俊郎 『恐怖城』 青空文庫
」 かたりをはるとき午夜の時計ほがらかに鳴りて、はや舞踏の大休となり、妃はおほとのごもり玉ふべきをりなれば、イイダ姫あわただしく坐を起ちて、こなたへ差しのばしたる右手の指に、わが唇触るるとき、隅の観兵の間に設けたる夕餉に急ぐまらうど、群立ちてここを過ぎぬ。
— 森鴎外 『文づかひ』 青空文庫