絵草
えそう
名詞
標準
文例 · 用例
そして「恨み重なるチャンチャン坊主」が、至る所の絵草紙店に漫画化されて描かれていた。
— 萩原朔太郎 『日清戦争異聞(原田重吉の夢)』 青空文庫
そのころは既に広重の出世作、『東海道五十三次』(保永堂板)は完成され、葛飾北斎の『富嶽三十六景』が、絵草紙屋の店頭に人目を驚かしていたのであるが、その地図にある定火消屋敷で、広重が生れ、西の丸のお膝下で、名城と名山の感化を受けていたのだと思うと、晩年に富士三十六景の集作があったのも、偶然でない。
— 小島烏水 『不尽の高根』 青空文庫
と思うと、袖を斜めに、ちょっと隠れた状に、一帆の方へ蛇目傘ながら細りした背を見せて、そこの絵草紙屋の店を覗めた。
— 泉鏡花 『妖術』 青空文庫
ひょろひょろの小僧は、叩きつけられたように、向う側の絵草紙屋の軒前へ駆込んだんです。
— 泉鏡花 『木の子説法』 青空文庫
明神様の託宣――と眼玉で睨んで見れば、どうやら近頃から逗留した渡りものの書生坊、悪く優しげな顔色も、絵草子で見た自来也だぞ、盗賊の張本ござんなれ。
— 泉鏡花 『草迷宮』 青空文庫
酸漿屋の店から灯が点れて、絵草紙屋、小間物|店の、夜の錦に、紅を織り込む賑となった。
— 泉鏡花 『菎蒻本』 青空文庫
娘は「猫のお湯屋」の絵草紙を見たことがあって、「あれがもし、日本の女たちの入る風呂の習慣としたら、同性たちと一緒に話したり慰め合ったりしながら湯に入れて、こんな便利な風呂の入り方はない」と羨ましそうにいった。
— 岡本かの子 『母子叙情』 青空文庫
そして、粘土細工、積木細工、絵草紙、メンコ、びいどろのおはじき、花火、河豚の提灯、奥州斎川孫太郎虫、扇子、暦、らんちゅう、花緒、風鈴……さまざまな色彩とさまざまな形がアセチリン瓦斯やランプの光の中にごちゃごちゃと、しかし一種の秩序を保って並んでいる風景は、田舎で育ってきた私にはまるで夢の世界です。
— 織田作之助 『アド・バルーン』 青空文庫