犠牲になる
ぎせいになる
表現動詞-五段-ラ行
標準
to be sacrificed
文例 · 用例
絶壁の下なる大深谷からは、霧がすさまじいいきおいで、皺嗄れ声を振り立てて上って来る、近づくほど早くなるかと思うと、端から砕けてサアッと水球を浴びせる、そうして呻りながら、尾根につかまり、槍先へ這いずり上って、犠牲になる生霊もがなと、捜し廻っている。
— 小島烏水 『槍ヶ岳第三回登山』 青空文庫
一種の芸術としては実に感嘆すべきものであるが、犠牲になる学者の難儀もまた少々ではないのである。
— 寺田寅彦 『錯覚数題』 青空文庫
また自分が、どのような運動に参加したって、所詮はその指導者たちの、名誉慾か権勢慾の乗りかかった船の、犠牲になるだけの事だ。
— 太宰治 『トカトントン』 青空文庫
そのもののために自己が存在し、そのものの滅亡は取りも直さず自己の滅亡である時、当然犠牲になるべきだと信じます)以外には通用しないことです。
— 岡本かの子 『仏教人生読本』 青空文庫
兄を助けるには何事も只犠牲になる。
— 平出修 『逆徒』 青空文庫
彼女は、自分のために貴方が大事な姪の幸福をさまたげるのなれば、自分は犠牲になるといった。
— 織田作之助 『俗臭』 青空文庫
もすこしで此女の変態性慾の犠牲になるところだった。
— 夢野久作 『あやかしの鼓』 青空文庫
「――肉体も精神も感覚を通して溶け合つて、死のやうな強い力で恍惚の三昧に牽き入れられるあの生物の習性に従ふ性の祭壇に上つて、まる/\情慾の犠牲になることも悪くはありませんが――しかし、ちよつと気を外らしてみるときに、なんだか醜い努力のやうな気がします。
— 岡本かの子 『夏の夜の夢』 青空文庫