運針
うんしん
名詞
標準
handling the needle
文例 · 用例
わたくしが安心もし、張合抜けもしたような様子を見て取り、雛妓は、ここが言出すによき機会か、ただしは未だしきかと、大きい袂の袖口を荒掴みにして尋常科の女生徒の運針の稽古のようなことをしながら考え廻らしていたらしいが、次にこれだけ言った。
— 岡本かの子 『雛妓』 青空文庫
紫の風呂敷包みの中には、絵本や、水彩絵具や、運針|縫いがはいっていた。
— 林芙美子 『風琴と魚の町』 青空文庫
野性に圧された重たい麻衣の上に少しばかりの柔靭さが加わったとすれば、あの不思議な縫糸と自然な運針とを仔細にあらためて見ねばならない。
— ――黙子覚書―― 『夢は呼び交す』 青空文庫
このごろ中、心にかけて習っている万葉集の中の歌が、そこはかとなく、例の声明と、浄瑠璃のリズムで、お雪ちゃんの鼻唄となって、いわば運針の伴奏をなして現われて来るらしい。
— めいろの巻 『大菩薩峠』 青空文庫
それに、あれにはどっさりあなたの運針のお手際があって、解くのも面白く、ひとりで二階の畳廊下で、青桐の風をうけながら折々笑いました。
— 一九四三年(昭和十八年) 『獄中への手紙』 青空文庫
「どうしたの、次郎ちゃん」花子が運針の手を止めて次郎を見た、「梅ちゃんが心配するじゃないの、泣くのやめなさいよ」「とうちゃん」 次郎は父の顔を見た。
— 山本周五郎 『季節のない街』 青空文庫
かの浅草の巷をあるく時の眼ざしや日本左衛門の手をのがれた素早さや、獄門橋で脅迫された仲間に匕首を酬いた時のすごい動作などというのも、深く観れば、一分一分キチキチと袖の縫い口をきめてゆく運針のうちに、おのずから現れていないこともありません。
— 吉川英治 『江戸三国志』 青空文庫
作例 · 標準
例句