盤木
ばんぎ
名詞
標準
文例 · 用例
佛の見たる幻想の世界花やかな月夜であるしんめんたる常盤木の重なりあふところでひきさりまたよせかへす美しい浪をみるところでかのなつかしい宗教の道はひらかれかのあやしげなる聖者の夢はむすばれる。
— 萩原朔太郎 『青猫』 青空文庫
雪に埋み盡された地面――そこには黒ずんだ常盤木の外に緑といふ色の夢にもない――が見る/\黒土に變り、黒土が見る/\若草の野に變つて行くあの華々しい變化は、雪國に越年しない人の想像する事が出來ない所だらう。
— 有島武郎 『春』 青空文庫
――青苔に沁む風は、坂に草を吹靡くより、おのずから静ではあるが、階段に、緑に、堂のあたりに散った常盤木の落葉の乱れたのが、いま、そよとも動かない。
— 泉鏡花 『貝の穴に河童の居る事』 青空文庫
ともすると又常盤木が落葉する、何の樹とも知れずばら/″\と鳴り、かさかさと音がしてぱつと檜笠にかゝることもある、或は行過ぎた背後へこぼれるのもある、其等は枝から枝に溜つて居て何十年ぶりではじめて地の上まで落るのか分らぬ。
— 泉鏡太郎 『高野聖』 青空文庫
常盤木の繁茂した山上には綿打ち弓から飛ぶ綿のやうな雲がちぎれて居る。
— 長塚節 『鉛筆日抄』 青空文庫
目籠には、常盤木の葉、敷き重ねて、その上に時ならぬ菫花の束を、愛らしく結びたるを載せたり。
— 森鴎外 『うたかたの記』 青空文庫
また常盤木の群木立は、去年のままの暗い緑を、さも物憂そうに顫わせた。
— 国枝史郎 『神州纐纈城』 青空文庫
道路と庭との境は、低い常盤木の生垣とし、芝生の、こんもり樹木の繁った小径を、やや奥に引込んだ住居まで歩けたら、どんなに心持がよいでしょう。
— 宮本百合子 『書斎を中心にした家』 青空文庫