旅籠銭
はたごせん
名詞
標準
文例 · 用例
……ただ遊びじゃあ旅銭旅籠銭の余裕はなし、久ぶりで姉さんの顔は見たし、いい幸に来たんだから、どうせ見世ものなら一人でも多く珍らしがらせに、真新しい処で、鏡の間から顔を出して、緋目高で泳いでれば可いんです。
— 泉鏡花 『卵塔場の天女』 青空文庫
そうして、小田原を発ったものは三島にとまり、三島を発った者は小田原に泊ることになるので、東海道を草鞋であるくものは、否が応でもこの二つの駅に幾らかの旅籠銭を払って行かなければならなかった。
— 山祝いの夜 『半七捕物帳』 青空文庫
理由を質してみると、あの僧侶が道筋の宿屋々々で、旅籠銭の代りに、その書を置いて往つたといふ事が判つた。
— 大正五(一九一六)年 『茶話』 青空文庫
お慈悲深い仏様さへ手の届かなかつた売僧を一人助けた上に、自分の書が田舎の房州路でさへ旅籠銭の代りになるといふ事を知つたのだから。
— 大正五(一九一六)年 『茶話』 青空文庫
筑波の脱走者、浮浪の徒というふうに、世間の風評のみを真に受けた地方人民の中には、実際に浪士の一行を迎えて見て旅籠銭一人前弁当用共にお定めの二百五十文ずつ払って通るのを意外とした。
— 第一部下 『夜明け前』 青空文庫
かくまで威張った武家が可笑しいことは、宿をとる時必ず旅籠銭を家来をして値切らせたものである。
— 内藤鳴雪 『鳴雪自叙伝』 青空文庫
旅籠銭は一人分が百五十文か二百文あたりであったと覚えている。
— 内藤鳴雪 『鳴雪自叙伝』 青空文庫
「わっしどもは、どうせ素なしの旅ですから、旅籠銭助けに、歩く心算でごぜえます。
— 吉川英治 『剣難女難』 青空文庫