拾い取る
ひろいとる
動詞
標準
文例 · 用例
町の小児らが河に泳いでいると、或る物が中流をながれ下って来たので、かれらは争ってそれを拾い取ると、それは一つの瓦の瓶で、厚い帛をもって幾重にも包んであった。
— 酉陽雑爼(唐) 『中国怪奇小説集』 青空文庫
この頃から翁は軽い中風の気味で、左足を引擦っていたのであるが、利彦氏が突飛ばされた拍子に投出した赤いお盆を拾い取ると、翁は自身で朗々と謡いながら舞い初めたが驚いた。
— 夢野久作 『梅津只圓翁伝』 青空文庫
おはちの隅にくっついているのも、おしゃもにくっついているのも、落ちこぼれたのさえも、一々丁寧にほじくり取り、撫で取り、拾い取る。
— 大杉栄 『獄中記』 青空文庫
四人バラバラに森林の中へ入ると、四方八方へ駈け廻って、手に石を拾い取ると、一種の合図めいた調子を取って、老木の幹を叩きつづけたのであるから。
— 国枝史郎 『生死卍巴』 青空文庫
ゆえに人間の衣食住を得るは、すでに造化の手をもって九十九|分の調理を成したるものへ、人力にて一分を加うるのみのことなれば、人はこの衣食住を造ると言うべからず、その実は路傍に棄てたるものを拾い取るがごときのみ。
— 福沢諭吉 『学問のすすめ』 青空文庫
足蹴にしたかと思うと、その、はずみをくらって取りおとす大刀を拾い取るが早いか、やはり、のっそりの仁王立ちの、流祖自源坊案|不破水月のかまえ。
— 乾雲坤竜の巻 『丹下左膳』 青空文庫
彼はその剣を拾い取ると、切先を歯に啣えながら苦もなく二つに折って見せた。
— 芥川龍之介 『素戔嗚尊』 青空文庫
その男は両手をオーバーのポケットにつっ込んだまま、三四歩よちよち駆け出し、それから両手を出して帽子を追っかけ、拾い取るが早いか、埃のついたままの帽子を慌てて頭にのせ、ハンカチで顔を一撫でして、真直に歩いていった。
— 豊島与志雄 『道化役』 青空文庫