水売り
みずうり
名詞
標準
文例 · 用例
――さすがのおひざもと大江戸も、真夏の酷暑に物みなすべてが焼けついて、かげろう燃える町中は、行き来の人も跡を断ち、水い、水い、と細く呼ぶ水売りの声のみがわずかに涼味をそそるばかりでした。
— 幽霊水 『右門捕物帖』 青空文庫
きょうは盂蘭盆の十三日で、昼の暑さはまだ水売りの声に残っているが、陰るともなしに薄い日影が山の手の古びた屋敷町を灰色に沈ませて、辻番のおやじが手作りの鉢の朝顔も蔓ばかり無暗に伸びて来たのが眼に立った。
— 岡本綺堂 『箕輪心中』 青空文庫
子供のように涙が湧きあふれて来て、私は地べたへしゃがんでしまうと、カイロの水売りのような郷愁の唄をうたいたくなった。
— 林芙美子 『新版 放浪記』 青空文庫
悲しい涙が湧きあふれて、私は地べたへしゃがむと、カイロの水売りのような郷愁の唄をうたいたくなった。
— 林芙美子 『放浪記(初出)』 青空文庫
それはズット昔からある水売りで、売子は白地の浴衣、水玉の藍模様かなんかで、十字の襷掛け、荷の軒には風鈴が吊ってあって、チリン/\の間に「ひやっこい/\」という威勢の好いのです。
— 淡島寒月 『江戸か東京か』 青空文庫
中年以後、水売りの船を三ばい持ったこともある、酒と博奕でそれも失い、足腰がきかなくなってから、この堀筋の頭たちの好意で、船番をするようになった、というように話した。
— 山本周五郎 『しじみ河岸』 青空文庫