枯野
かれの
名詞
標準
文例 · 用例
常盤の松を名に呼べれば、千歳ならずとも枯野の末まではあるべきを、萩の花ちりこぼるゝやがて声せずなり行く。
— 樋口一葉 『あきあはせ』 青空文庫
芭蕉の郷愁が、旅に病んで枯野を行く空間上の表現にあったに反し、蕪村の郷愁が多く時間上の表象にあったことを、読者は特に注意して鑑賞すべきである。
— 萩原朔太郎 『郷愁の詩人 与謝蕪村』 青空文庫
蕭条として石に日の入る枯野哉 句の景象しているものは明白である。
— 萩原朔太郎 『郷愁の詩人 与謝蕪村』 青空文庫
わが漂泊の詩人|芭蕉は『旅に病んで夢は枯野をかけめぐる』といって死んだ。
— 室生犀星と佐藤春夫の二詩友を偲びつつ 『小泉八雲の家庭生活』 青空文庫
これが、この世の見おさめと、門辺に立てば月かげや、枯野は走り、松は佇む。
— 太宰治 『東京八景』 青空文庫
然し、その冴えが余に利き過ぎる時、例へば「枯野抄」の中で芭蕉の門弟達に放つた窺察、解剖の如きに到ると、恰も冷たいメスで人間の心理を切り分けてでもゐるやうな、甚だ人間的なものを欠いた、拵へものの心理になつてしまつてゐる。
— ――全人間的な体現を――(その一、芥川龍之介氏) 『現代作家に対する批判と要求』 青空文庫
画工 (枠張のまま、絹地の画を、やけに紐からげにして、薄汚れたる背広の背に負い、初冬、枯野の夕日影にて、あかあかと且つ寂しき顔。
— 泉鏡花 『紅玉』 青空文庫
枯野の霧の緋葉ほど、三崎街道の人の目をひいたろう。
— 泉鏡花 『薄紅梅』 青空文庫