潦
にわたずみ
名詞
標準
文例 · 用例
その後を水が走って、早や東雲の雲白く、煙のような潦、庭の草を流るる中に、月が沈んで舟となり、舳を颯と乗上げて、白粉の花越しに、すらすらと漕いで通る。
— 泉鏡花 『草迷宮』 青空文庫
池は小さくて、武蔵野の埴生の小屋が今あらば、その潦ばかりだけれども、深翠に萌黄を累ねた、水の古さに藻が暗く、取廻わした石垣も、草は枯れつつ苔滑。
— 泉鏡花 『南地心中』 青空文庫
灰色の、じっとして動かぬ大空の下の暗い草原、それから白い水潦、それから側のひょろひょろした白樺の木などである。
— 太宰治 『女の決闘』 青空文庫
野原の中の黒い水潦に何べんもみんな踏み込んだ。
— 宮沢賢治 『秋田街道』 青空文庫
それは日が地上を去って行ったあと、路の上の潦を白く光らせながら空から下りて来る反射光線である。
— 梶井基次郎 『冬の蠅』 青空文庫
撒き水のまだ溜り残っている行潦を、春の名残りの恋猫が足を気色悪るげに振って渡り過ぎる姿が、先き角の小学児童用品店の灯で、痩せさらばった影に匍います。
— 岡本かの子 『生々流転』 青空文庫
「午道氷消潦」の句があり、又「残雪水鳴矼」の句がある。
— 森鴎外 『伊沢蘭軒』 青空文庫
昨日の雨の名殘りの水潦が路の處々に行く人の姿々を映して居るが、空は手掌程の雲もなく美しく晴れ渡つて、透明な空氣を岩山の上の秋陽がホカ/\と温めて居た。
— 石川啄木 『葬列』 青空文庫