用向き
ようむき
名詞
標準
business
文例 · 用例
さてそんなことで、主人も私も東海道のことはすっかり忘れ果て、二人ともめいめいの用向きに没頭して、名古屋での仕事もほぼ片付いた晩に私たちはホテルの部屋で番茶を取り寄せながら雑談していた。
— 岡本かの子 『東海道五十三次』 青空文庫
箱根は二十年も昔水産関係の用向きで小田原へ行ったついでに半日の暇を盗んで小涌谷まで行ったのと、去年の春長尾峠まで足を使わない遠足会の仲間入りをした外にはほとんど馴染のない土地である。
— 寺田寅彦 『箱根熱海バス紀行』 青空文庫
田中舘先生の肖像を頼む事に関して何かの用向きで、中村|清二先生の御伴をして、谷中の奥にその仮寓を尋ねて行った。
— 寺田寅彦 『中村彝氏の追憶』 青空文庫
どんな用向きでどんな話をしたか、それがどういう風に運んだのであったか、その方の記憶は完全に消えてしまっている。
— 寺田寅彦 『中村彝氏の追憶』 青空文庫
タッタ今わかった」「どうしてかいな」「どうしてと言うて知れた事……この四、五日が間、福岡博多の何処の家にも下がっとるこの渋団扇の由来を知らんと言うからには、遠方行きにきまっとる」「成る程なあ」「ところで今日の用向きは何かいな。
— ――博多名物非人探偵 『狂歌師赤猪口兵衛』 青空文庫
今日の父は用向きがまったく失敗に終ったこと、父が侮蔑だと思いこみそうなことを先方からいわれて胸を悪くして帰ってきたこと、それをも手に取るように感ずることができた。
— 有島武郎 『星座』 青空文庫
横浜は西洋臭し、三崎は品が落着かず、界隈は間に合わせの俄仕入れ、しけものが多うござりますので、どうしても目量のある、ずッしりしたお堅いものは、昔からの藤沢に限りますので、おねだんも安し、徳用向きゆえ、御大家の買物はまた別で、」 と姥は糸を操るような話しぶり。
— 泉鏡花 『草迷宮』 青空文庫
ところが、去年の初春、本籍地の区役所へ出掛けねばならぬ用向きが生じた。
— 織田作之助 『木の都』 青空文庫