蔓薔薇
つるばら
名詞
標準
文例 · 用例
蔓薔薇がどの舎宅の羽目にも絡んでいるそれが、いよ/\この一劃をそう見させるのでしょうか少し西洋玩具の村の感じがしましたけれども、だけそれだけ、下町娘のわたくしに、何もかも家のことは忘れさせて目新らしいことを夢みさすには充分でした。
— 岡本かの子 『生々流転』 青空文庫
此の家は道路に面して鉄柵を張った前庭を置き暗褐色のどっしりした玄関が冷淡に控えて居るが、一寸横へ廻って見ると、この邸内は斜めに奥へ拡がり、四季咲きの紅白の蔓薔薇に取り囲まれた二百坪ばかりの緑の芝生の裏庭に向う室は軽快なサンルームとなって、通りすがりの男女にちょっと盗見したい気持を起させる。
— 岡本かの子 『ガルスワーシーの家』 青空文庫
中央の亭の柱にからんで、円錐形の萱葺き屋根の上へ這い上って居る蔓薔薇は夏から秋に移ると直ぐに寒くなる英国の気候にめげてまばらに紅白の花を残して居たが、其の亭の周りのシンメトリカルに造られた四ツ弧形の花床には紅白黄紫の大輪菊がダリヤかと見えるようなはっきりした花弁をはねて鮮やかに咲き停て居る。
— 岡本かの子 『ガルスワーシーの家』 青空文庫
ここでも島の中の料亭と同じく庭の中の野天の食事だったが、別れた客席のそれぞれが、花や蕾をつけた自然の蔓薔薇の垣根からなる部屋で、隣席が葉に遮られて見えず、どの客も中央の楽団から演奏されて来る音楽だけを愉しむ風になっていた。
— 横光利一 『罌粟の中』 青空文庫
」 天井には造花の蔓薔薇が、黄色いランタアンを囲んでビイドロのやうに紅く咲いてゐる。
— 林芙美子 『「リラ」の女達』 青空文庫
校門をくぐると、校庭の蔓薔薇などは虫食いだらけの裸になってしまって、木という木はおおかた葉を振り落していた。
— 林芙美子 『泣虫小僧』 青空文庫
でも値段が安いので、私は蔓薔薇や、唐辛子の鉢植えなどを買いに行った。
— 林芙美子 『落合町山川記』 青空文庫
雲の断れ目から照り出した初夏の日光に、ゼラニュウムや蔓薔薇の紅の花が、純白な大理石の基督の肌と、つよい対照で目を射た。
— 宮本百合子 『長崎の印象』 青空文庫