顔画
かおが
名詞
標準
文例 · 用例
筆を執っても原稿用紙の隅に自分の似顔画を落書したりなどするだけで、一字も書けない。
— 太宰治 『ダス・ゲマイネ』 青空文庫
根のいいロシヤ人の即席似顔画描きが、隣のキャフェ・ル・ドームを流した後らしく、入って来て、客の気分を見計いながら、鉛筆の先と愛想笑いで頼み手を誘惑しているが、誰も相手にしない。
— 岡本かの子 『母子叙情』 青空文庫
此の有名な漫画家の描いた文豪の似顔画はあまり出来のいいものではなかった。
— 岡本かの子 『ガルスワーシーの家』 青空文庫
が、うかうかと間違ってはいった以上、こそこそ逃出して、似顔画描かなにかと思われては癪だと、ルンバの音を腹立しく聴きながら、隅の方の席へ坐った。
— 織田作之助 『青春の逆説』 青空文庫
」 壁には薄り、呼吸の痕と、濡れた唇が幻にそのまま残って、蝶吉の体は源之助の肖顔画が抜出したようになって、主婦の手で座敷の真中へ突入れられて、足も溜らず、横僵れになったが、男の傍。
— 泉鏡花 『湯島詣』 青空文庫
以前、人形町辺に居りました時分ちょいちょいお店へ参って、といってこの天窓に対して、(肖顔画などを孫どもに買ってやりましたで存じております、)などと遣ったですて。
— 泉鏡花 『式部小路』 青空文庫
」 かれは画学紙に描いた似顔画を、わたしに贈りたがつた。
— 牧野信一 『岬の春霞』 青空文庫
「ありがたう――」 といつてわたしは、あまり拙劣過ぎる似顔画なので眺める気もなく、机の上にほうり出して、改めて当人の顔を見ると、やゝ面長で鼻筋がとほり、映画俳優の中野英治を髣髴させるかのやうな爽快な可憐味に富んでゐた。
— 牧野信一 『岬の春霞』 青空文庫